有機シリコーン材料は、シロキサン(Si-O)結合を主鎖とし、側鎖にメチル基やフェニル基などの有機基を持つ高分子材料です。その特有の「無機―有機」ハイブリッド構造により、無機材料の耐熱性・耐候性と有機材料の柔軟性・加工性を兼ね備え、現代産業において不可欠な材料となっています。特に AI スマートデバイスの急速な発展に伴い、有機シリコーンの性能優位性が一層際立っています。
I. 基本特性
有機シリコーン材料の主要な特長は以下の通りです。
耐高低温性
Si-O 結合の結合エネルギー(約460 kJ/mol)は、C-C 結合(約345 kJ/mol)よりもはるかに高いため、有機シリコーンは -60℃~250℃ の範囲で長期使用が可能で、短期間であれば 300℃ を超える温度にも耐えられます。この特性は、屋外センサーや宇宙機器部品など、極端な温度変化に対応する AI デバイスにおいて重要です。
耐候性・安定性
紫外線、オゾン、水分、酸・アルカリ・溶剤などの化学的腐食に対して極めて安定であり、高温多湿や強放射環境に長期間さらされても性能を維持できます。そのため、屋外電子機器や産業用途に最適です。
電気絶縁性
体積抵抗率が 10¹⁴~10¹⁶ Ω·cm と高く、誘電損失が低いため、電流のリークを防ぎ、優れた絶縁性能を発揮します。チップ封止やプリント基板保護など、電子電気分野での重要な絶縁材料として使用されます。
生体適合性
医療用シリコーンゴムなど一部の有機シリコーンは無毒・無臭で、生体組織との適合性が高く、安全に医療用インプラントやウェアラブル型の健康モニタリングデバイスに利用できます。
低表面張力
表面エネルギーが低く(約21~22 mN/m)、撥水性・自己洗浄性・防汚性を備えています。そのため、スマートフォンの防水膜やロボット関節用シール材などのコーティング・シーリング用途に適しています。
柔軟性と弾性
シリコーンゴムは優れた柔軟性と反発弾性を持ち、複雑な形状や動的変形に対応可能です。フレキシブル電子基板や伸縮性回路などに広く応用されています。
II. 材料の分類
シリコーンゴム
最も一般的な有機シリコーンで、高温加硫型(HTV)と室温加硫型(RTV)に分類されます。HTV は高温で硬化し、弾性と耐老化性に優れ、シール材や防振材に使用されます。RTV は室温で硬化し、取り扱いが容易で、小規模生産や現場施工に適しています。
シリコーン樹脂
高硬度、耐熱性、耐放射線性を特徴とし、LED 封止、電子部品保護用のコーティング材や高温環境下の構造材料として利用されます。
シリコーンオイル
液状の有機シリコーンで、粘度-温度係数が低く、潤滑性に優れています。AI チップの冷却媒体やロボット関節の潤滑剤として使用されます。
シランカップリング剤
有機/無機界面の接着力を改善し、複合材料の性能を向上させる機能性材料です。AI デバイスに用いられる熱伝導性複合材料において重要な役割を果たします。
シリコーングリース
シリコーンオイルに酸化アルミニウムや窒化ホウ素などのフィラーを組み合わせたもので、低表面張力と熱伝導性/導電性を兼ね備え、電子部品の放熱や電磁シールドに使用されます。
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