2025年9月、有機シリコーン産業は、価格の回復、技術革新、政策調整、企業戦略といった複数の要因が交錯する中で、産業構造の深い再編期を迎えている。ラボでの画期的な成果から市場の需給変化に至るまで、業界は以前の過剰生産の影を徐々に脱し、高品質な成長の新たな段階へと進んでいる。

価格の安定と上昇、需給構造の転換点
国内の有機シリコーン市場は、最近緩やかな上昇傾向を示しており、主要中間体であるDMCの価格は連日わずかに上昇している。9月19日のデータでは、国内DMCの市場平均価格は10,900元/トンで、前営業日比で50元の上昇となった。以前の9月17日には、1日で100元上昇していた。価格上昇の主な要因は供給面の構造調整にあり、大手企業は受注が順調で生産計画がタイトなため、現物流通が逼迫し、コスト面の支えも強化され、価格維持意欲が高まっている。

業界のファンダメンタルズから見ると、今回の価格安定は需給構造の実質的な改善によるものである。2025年第2四半期以降、合盛シリコーンや新安化学などの大手企業は、生産削減や設備点検を通じて積極的に生産能力を調整し、稼働率を適正水準に回復させ、在庫消化サイクルを短縮している。同時に、海外のワッカーやテルノなどの企業も高エネルギー消費ラインの閉鎖を加速させ、世界の有効生産能力がさらに縮小し、需給ギャップが徐々に顕在化しており、価格回復の基盤を形成している。

権威あるジャーナルでの技術突破、循環型経済での大きな進展
中国中化グループ傘下の藍星エイケン社は国際チームと共同で、有機シリコーンのリサイクル技術において画期的な突破を達成し、その成果は国際的権威誌『Science』に掲載された。この技術は、有機シリコーンのリサイクルにおける「低温高効率」を実現しており、40℃の穏やかな条件下でガリウム触媒と三塩化ホウ素の協同作用を利用して、さまざまな有機シリコーン廃棄物を塩化シラン原料に変換することができる。反応速度は従来法に比べて百万倍向上し、収率は90％以上に達する。

この技術の核心的価値は、長年業界を悩ませてきたリサイクルの課題を解決する点にある。シリコーンオイルやシリコーンゴムなどの単一製品だけでなく、充填材や添加剤を含む複雑な工業廃棄物、さらには寿命を迎えた架橋エラストマーも効率的に分解可能である。リサイクル産物である塩化シランは、有機シリコーン生産に直接再利用でき、完全な循環型利用チェーンを形成することができる。これにより、有機シリコーン廃棄物が焼却や埋立に依存する現状を根本的に変え、産業のCO₂削減を支える重要な支柱となる可能性がある。以前、エイケン社は高粘度ゴムの機械的リサイクルプロセスを検証し、再混入率50％以上を実現しており、複数のリサイクル技術の組み合わせにより、産業の循環型経済への転換を促進している。

高付加価値製品分野でも、技術突破が相次いでいる。合盛シリコーンは化学修飾により海外の技術独占を打破する有機シリコーンハイブリッドゴムの研究成果を発表し、江瀚新材は高付加価値のエポキシシランを独自開発し、3Cデジタル製品や電動バッテリー分野に応用、国内の空白を埋めた。

政策と資本の連動、産業エコシステムの深い調整
政策面では最近、多くの変化が見られ、機会とリスクが同時に存在する。米国の関税政策の変更は輸出市場に影響を与える重要な変数である。9月8日より、一次形態のポリシロキサンが免税リストから除外され、中国からの輸出品に対して10％の対等関税が課され、2025年11月以降には34％に引き上げられる可能性がある。中国は米国への最大輸出国であり（2025年1～7月の輸入シェア27.4％）、この政策は関連輸出企業に一定の圧力をかける。

国内政策は引き続き産業の最適化・高度化を促進しており、雲南省や新疆ウイグル自治区では生産制限や旧式設備の淘汰を通じ、供給構造を効率的かつグリーンな方向に転換している。政策誘導と市場需要が共鳴し、資本が積極的に投入されている。最近では、錦華新材が北交所で株式公開を開始し、全てのオーバーアロットメントを行使すれば68.2億元を調達可能で、高付加価値カップリング剤プロジェクトや研究所建設に重点投資される。協鑫科技は中東から50億元の出資を受け、シランガスおよびペロブスカイト関連事業に注力、技術革新に資本が注入される。

企業レベルでも戦略的調整が活発である。フィノテック杭州は年産16万トンのシリコーンシーラント第2期プロジェクトを年末に稼働予定で、フル稼働時の年産値は18億元に達する見込み。信越シリコーン（平湖）は年産5,000トンの有機シリコーン製品プロジェクトの環境影響評価を承認された。新安股份は米国Valtrisと戦略協定を締結し、難燃剤分野での協力を強化する。同時に、エイケンASAは有機シリコーン事業の独占販売交渉を開始しており、業界統合の歩みが静かに進んでいる。

新興需要の台頭、産業成長の新たな原動力
従来の建築や電子分野の需要が安定する一方で、新エネルギーや高付加価値製造が産業成長の中核を形成している。新エネルギー車分野では、1台あたりの有機シリコーン使用量は従来のガソリン車を大幅に上回り、バッテリー封止材や電装システムのシール材などの需要が急増している。太陽光産業では、モジュール封止材やフレーム接着剤の市場規模が急速に拡大しており、2025年の世界需要は45万トンを突破する見込みである。医療・健康分野では、生体適合性液状シリコーンの人工臓器や手術器具への応用も加速している。

産業変革に直面し、上下流の企業は積極的に備えている。10月29日～31日には「ナノ二酸化シリコン材料の技術と応用交流会」が深圳で開催され、ワッカーやエボニックなどの国際大手も参加予定である。同時期に有機シリコーン精密化学品技術交流会など複数のイベントも開催される。また、『ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン』および『電池用熱伝導性有機シリコーンゲル』の2つの団体規格が正式に発表され、2025年12月から施行され、業界の高品質な発展を支える標準となる。

業界関係者は、技術突破の実用化、需給構造の最適化、新興需要の解放により、有機シリコーン産業の収益改善の傾向は明確であると指摘している。ただし短期的には在庫消化の進捗や海外政策の変化に注視する必要がある。将来的には、技術優位性、循環型経済への取り組み、グローバルな生産能力配置を持つ企業が、産業再編の中で先行者利益を得ることになる。