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電子機器はますます小型化しながら高性能化が進んでいます。スマートフォンが数時間ゲームをしてもカクつかず、原子力発電所のケーブルが高温環境で長年安定して稼働できるのも、実はある「安定器」の存在が大きく関わっています。それが 有機シリコーン です。独自の性能によって、電子・電気分野に欠かせない核心材料となっています。
電子機器が小型化・高出力化するにつれ、材料に求められる条件はますます厳しくなっています。優れた絶縁性による短絡防止、発生した熱を素早く逃がす高い熱伝導性、そして機器の寿命を延ばす耐老化性。これらすべてを満たせる材料は多くありません。しかし有機シリコーンは、無機材料の耐熱性と有機材料の柔軟性をあわせ持つ、まさに電子材料の「万能選手」なのです。
半導体チップの製造工程でも、有機シリコーンは極めて重要な役割を果たします。小さなチップの中には数十億個のトランジスタが集積されており、動作時には大量の熱を発生します。また、水分やホコリに非常に弱い構造でもあります。シリコーン封止材は、チップを「保護シールド」のようにしっかりと包み込み、外部からの影響を遮断すると同時に、自身の熱伝導性によって熱を逃がし、高負荷環境でも安定動作を維持させます。
電線・ケーブル業界も、有機シリコーンの重要な用途の一つです。高速鉄道車両内のケーブルは振動や温度変化に耐えなければならず、原子力発電所のケーブルは高温や化学腐食にさらされます。こうした特殊環境では、一般的な絶縁材料では対応できません。有機シリコーン絶縁層は −60℃〜200℃ の範囲で安定した絶縁性能を保ち、耐老化性・耐腐食性にも優れているため、特殊用途ケーブルの第一選択肢となっています。
さらに、コンシューマー向け電子機器でも有機シリコーンはあらゆる場所で活躍しています。スマートフォンやパソコンの放熱モジュールには、熱伝導グリースが欠かせません。これは、部品とヒートシンクのわずかな隙間を埋め、放熱効率を数倍に高める「熱の架け橋」です。キーボードの防水パッドやイヤホンのシール部品もシリコーン製にすることで、防水・防塵性能が大幅に向上します。
これら一見目立たないシリコーン部品こそが、電子機器の安定稼働を支えているのです。
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